報道関係

2008年(平成20年)2月18日(月曜日) 読売新聞
あの事件、事故さえなければ…

 事件や事故により命を断たれた人たちの写真や遺品などを展示する催しが、斐川町直江町の町立図書館で開かれている。成人式の晴れ着姿のにこやかな写真や、泥がついたままの消防士の靴など、物言わぬ展示品が犠牲者の無念を訴えている。企画した遺族は「展示から、命の尊さを感じとってほしい」と願っている。3月2日まで。

 1999年12月、鳥取県智頭町の国道で、当時鳥取大3年生の江角真理子さん(当時20歳)、大谷知子さん(同21歳)、大庭三弥子さん(同21歳)は車に乗っていて、飲酒運転の乗用車に衝突されて死亡した。
姉と行ったロンドン旅行や晴れ着に身を包んだ成人式。3枚の写真の中の江角さんはいつも笑顔。「夢をかなえることも、自分の子どもを腕に抱くこともなく、亡くなりました」。母の由利子さん(59)が添えた言葉に悔しさがにじむ。
小学校の教壇に立つ写真は、教育実習生だった大谷さん。「先生はいつも明るくて、気が休まりました。私のことを忘れないで」。寄せ書きの色紙を埋めた子どもたちの言葉が、大谷さんの人柄をしのばせる。
 福岡県出身の大庭さんは高校生のころ、休日にはミカン農家である実家の畑仕事を手伝っていた。展示されているのは、タンポポの綿帽子を吹く写真。母の由美子さん(56)は「駆け付けた病院で、目を覚ましてほしい、もう一度、『お母さん』と呼んでと願った」と手記でつづる。


 2005年7月、浜田市長沢町の自宅前で長男とキャッチボールをしていて近所の男に刺され死亡した消防士石川秀治さん(当時36歳)。前日まで仕事で履いていた革靴やヘルメットを置いた。

 革靴には泥がうっすらと残る。「落とす気になれなくて」。展示品を寄せた石川さんの妻、俊子さん(38)は語る。秀治さんは生前、「人の役に立ちたい」と話していたといい、俊子さんは「遺品が命の大切さを伝える新しい使命を持ち、夫も喜んでるんじゃないかな」と語る。

 訪れた同町上直江の県職員勝部治季さん(31)は「遺族の気持ちが迫ってくる。生きていることを大切に思い、子どもたちにも伝えなければと強く感じた」と話していた。


 展示は、9月12〜14日に出雲市駅南町の「ビッグハート出雲」で約130人の遺品を展示する「生命(いのち)のメッセージ展」を前に、プレイベントとして企画された。同展は全国で開催され、江角さんは2001年から参加。2006年秋に江角さんの講演に、石川さんが訪れたことから、4遺族の交流が始まり、県内では初めてとなる出雲市での同展開催が実現した。
 


報道関係へ戻る >>