報道関係

2008年(平成20年)2月27日(水曜日) 日本海新聞
 一九九九年に智頭町で起きた、飲酒運転の乗用車に衝突され、鳥取大学の女子学生三人が死亡した事故と、二〇〇五年に浜田市で起きた消防士殺人事件の遺族が、斐川町直江の町立図書館でミニ生命(いのち)のメッセージ展 を開いている。会場に設置された等身大の四人のパネルが、生きた証しや理不尽に命を奪われた無念さを伝えている。九月に出雲市で開かれる「生命のメッセージ展」を前に、同展の理解を深めてもらうのがねらい。三月二日まで。
□「ミニ生命のメッセージ展」□
「ミニ生命のメッセージ展」=斐川町立図書館
懸命にブレーキ


 タンポポの綿帽子を吹く大庭三弥子さん=当時(二一)=の写真。母親の由美子さん(五六)=福岡県前原市=はメッセージで「美弥子の右足はひざから骨が飛び出していました。トンネルを抜けて緩やかなカーブを曲がると対向車が自分の車線に突進してきたのでびっくりして、大切な親友と自分を守るために一生懸命ブレーキを踏んだのです。その時の恐怖心はどのようなものか想像がつきませんが、代わってあげたかった」とつづる。
 大庭さんは、鳥取大の砂濃緑化の取り組みに感銘して同大農学部に入学。両親には大学院まで進んで後援の設計の仕事したいと話していた。
 その隣には、ともに斐川町出身の江角真理子さん=同(二〇)=、大谷知子さん=同(二一)=のパネルが並ぶ。それぞれ語学研修先のロンドンや成人式の晴れ着姿で笑顔を見せている。
 大学入学後十カ国を訪ね、英語が堪能な江角さんは旅行会社への就職、ピアノと国語が得意な大谷さんは小学校の教員を目指していた。

天職の消防士
 浜田市の消防士、石川秀治さん=当時(三六)=は自宅前で長男とキャッチボールをしていて近所の男に刺し殺された。事件直後、「飼い犬の鳴き声がうるさくて」との男の警察での供述が報道されたが、裁判の結果、男の一方的な妄想や邪推による犯行だった。
 パネルには、仕事で着用していた消防士のヘルメットや泥のついた靴、消防競走部のキャプテンを務めていた石川さんの大会での勇姿…。妻の俊子さん(三八)は「『人の役に立ちたい』がパパの口癖でした。消防士はパパにとって天職だったと思います。」と
 六歳の二男と会場を訪れた出雲市萩杼町、主婦、小川みきさん(三三)は「以前テレビで遺族の方たちが等身大のパネルを作るところを見ました。悲しい出来事が起こらない世の中にするためにも、子どもたちをはじめ多くの人にみてほしい」と話した。


平凡な夢さえも…
 江角さんの母親、由利子さん(五九)は「当人たちの生前の生き生きとした姿と、人生を断ち切られた悔しさ、家族や家族や友人の悲しみに思いをはせ、感じたことを身近な人に伝えていただきたい」と言う。
 大庭さんの母親、由美子さんのメッセージは次のように続く。「私たちは娘たちと過ごす時間が必要だったのです。まだまだ伝えたいことがたくさんあるのです。ウェディングドレスを着せてやりたいのです。そんな母親のごくごく平凡な夢は、被害の飲酒運転というとんでもない事故ですべてかなわぬものとなってしまいました」=。(松枝支社・酒井健治)
 

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