報道関係

2008年(平成20年)8月4日(月曜日) 日本海新聞
 
「君の断ち切られた夢をお母さんが代わりに実現してやるよ」。八年前、飲酒運転の暴走車に早稲田大学に入学したばかりの十九歳の一人息子を奪われた神奈川の造形作家、鈴木共子さんは、三回目の受験で早大入学を果たした◆「生命(いのち)のメッセージ展」の代表を務め、メッセージ通りに行動する母親の愛情とバイタリティーに敬服する。鈴木さんに共感して、仲間と九月に出雲市で同展を開く島根県斐川町の江角由利子さん(六〇)も、準備や講演に駆け回っている◆江角さんが活動する理由は、九年前に飲酒運転の車に衝突されて亡くなった、鳥取大生だった二十歳の娘と友人二人が、それぞれの夢の実現に一生懸命生きていたことを知ってほしいからだ。事故後、近所の人が「若い娘があんな時間に遊びに出かけているから…」とうわさしていることに傷ついたという◆肉親の理不尽な死に打ちのめされ、「もう一度声が聞きたい、笑顔を見たい」と思い続けている遺族への想像力を持ちたい。鈴木さんや江角さんの行動力は、悔しさや怒り、わが子をいとおしむ気持ちが支えている◆出雲展には、事故や犯罪の遺族が自ら作った、メッセージを添えた犠牲者百三十一人の等身大のオブジェと愛用した靴が、生きた証を伝える。断ち切られた命を思い、輝いて生きよう。
 

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