報道関係

2008年(平成20年)9月12日(金曜日) 山陰中央新報
心に巻いたアルミ箔取って
明 窓
 最愛の家族を事故や事件で突然失ったとしたら…。動転のあまり事態への対処は多分、ほとんどできない。ああしておけば良かった。こう言っておけば、と後悔ばかりが先に立ちそうだ▼「生命のメッセージ展in出雲」が今日から三日間、出雲市のビッグハート出雲で開かれる。殺人や飲酒・無免許運転など、事件事故の犠牲者が展覧会の主役だ。百三十一体の等身大パネルに犠牲者の写真が掲げられ、足元にはお気に入りだった靴が置かれる▼メッセージ展は二〇〇一年三月、東京で初めて開催。出雲市で五十四回目を数える。島根県からは一九九九年暮れ、鳥取県内で車線を越えた飲酒運転の車に衝突され死亡した斐川町出身の元鳥取大生・江角真理子さん=当時(20)=ら三人のパネルが展示される▼真理子さんの母・由利子さん(60)は警察で遺品をごみ袋に入れて返された。動転したまま帰宅。真理子さんが事故当時にはいていた靴がないことに、一年もたって気付く。オランダ旅行で買った自慢の靴だったのに、と今も悔やむ▼展示には命の大切さを知ってほしい、という遺族の願いがこもる。「亡くして知るのでは遅すぎる」のだと。そして理不尽な死を絶対に起こしてはならない、との犠牲者の願いをビッグハート(やさしいこころ)に包んでほしいと▼実行委員長の江角弘道さん(63)は言う。「携帯電話にアルミ箔を巻くと聞こえなくなる。犠牲者の声や願いは会場だけでなくどこにもある。心に巻いたアルミ箔を取り除き聴いてほしい」(晶)
 

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