報道関係

2009年(平成21年)1月25日(日曜日) 毎日新聞
 
 全国の交通刑務所の中では初めて市原刑務所(市原市磯ケ谷、石渡貫一郎所長)で23日に開かれた「生命のメッセージ展」(鈴木共子代表)。交通事故や犯罪で命を落とした被害者の等身大のパネルを並べ、遺族の思いを伝える展示に、受刑者たちは真剣な表情で見入った。【柳澤一男】
 会場には133人の真っ白いパネルが並べられた。パネルには家族のメッセージと遺影が掲げられた。笑顔でギターを弾く22歳の男性、野球の試合でバットを振る13歳の男の子……。参加した399人の受刑者はそれらをじっくり読み、中にはハンカチで涙を何度もぬぐう姿や、ひざまずいて手を合わせる姿も見られた。
 「突然命を奪われた被害者遺族のやるせない気持ちを伝えたい」と、7年以上要望し続けてきた遺族の思いがようやく実現した。しかし、「交通刑務所での開催にためらうメンバーもいた」と鈴木代表は説明する。
 会場には、この日のために遺族ら23人が受刑者へあてたメッセージが添えられた赤い円形のボードが飾られた。「どんな理由があろうと、奪った命を決して忘れてほしくはない」「刑期を終えたから終わりではないのです。そこから本当の償いがはじまるのです」。遺族の問いかけに、じっと見つめる受刑者もいた。
生命のメッセージ展メンバーが、受刑者に当てた手紙が張り付けられたボード
交通刑務所で初めて行われた生命のメッセージ展=いずれも市原市の市原刑務所で
 05年10月、バイクで走行中に事故にあって死亡した船橋市の明地龍さん(当時28歳)の母多恵子さん(57)は「かけがえのない息子の命を奪われた苦しみは癒えることはない。受刑者は心から反省してほしい」と涙を流した。また、00年5月、バイクで帰宅途中に大型トラックに追突されて死亡した八千代市の森孝男さん(当時48歳)の妻恵子さん(52)は「泣いて謝るのは簡単だけど、本当のしょく罪の気持ちがないと過ちを繰り返すと思う。ここで見たことを忘れないでほしい」とハンカチで目頭を押さえた。
 同刑務所は1969年に日本で初めて交通事故による受刑者を収容する刑務所となった。01年からは全国の受刑者を収容するようになり、再犯防止のため被害者の視点を取り入れた教育を実施している。担当者は「感銘して涙する受刑者もいた。今回の展示を見て慰謝や社会貢献に結びついてくれるのではないか」と話した。
 数年前に、歩いていたお年寄りの女性をはねて死なせてしまったという20代前半の男性は、パネルの数に圧倒され、会場の入り口でためらったという。「遺族が会釈してくださったのを見て、逃げないで直視しないといけないと思った。今までの謝罪では足りなかったと痛感した。今日見たことはずっと忘れない」とうつむいた。
 

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