メールを送る

先だった命(講演)

3.いのちをみつめる


 17年前のはがきには、
「今日(1985.3.27)の万博見学は雨に降られて、寒くて大変だったね。
でも子供達は大きくなったら、科学も大切だけど、その他にもっともっと大切なものがあることがきっとわかっているだろうね。それは何ですか?」
と書いてあった。
 昭和60年(1985年)につくば科学万博に家族五人(私と妻由利子、長女悠子、二女真理子、長男泰俊)で見学に行った。私が40歳の時であった。あちらこちらと見学していると、20世紀の私から、「21世紀のあなたに届ける夢の郵便」というポストがあり、本当に届くだろうかと思い、由利子・悠子・真理子・泰俊宛に上記文面ではがきを書いた。そのことはほとんど忘れていたのだが、2001年の元旦にはがきは届いた。だがこの時、このはがきの宛名の一人真理子は、この世を去っていた。
 真理子よ、はがきの問いかけ「人間にとって、もっとも大切なものは何か」の返事をいつの日か送ってほしい。
 法句経に、「人として生を受くるは、難く、やがて死すべき身の、今命あるは、有り難し。」とあります。
私たちは、全く自分の意志と無関係に、たまたま人間としてある両親のもとに生まれてきたわけですね。そして今、命があるわけですね。有り難いことですね。真理子は、今、命がないんですよ。
本当に人間に与えられているのは、「今」しかないと思います。今を切に生きることしかないと思う。
そして、「死と向き合って生きてほしい」と思います。これはちょっとかたぐるしい言葉ですが、もっとくだけて言えば、「自分はどこからきて、今どこにいて、これからどこへ行くのか」という問いを抱きながら歩んでいって欲しいと思います。
 今日は、長時間に渡り私のつたない話をお聞きくださいまして、ほんとうにありがとうございました。
 
<< 前のページ 先だった命(講演)トップ

無断転載はご遠慮ください。